ホワン-雨のサイゴン

サイゴン陥落と南ベトナム崩壊

4月30日の早朝には、最後までサイゴンに残ったグエン・バン・チュー元大統領ら南ベトナム政府の要人や軍の上層部とその家族、アメリカのグレアム・アンダーソン・マーチン駐南ベトナム特命全権大使や大使館員、アメリカ人報道関係者などの南ベトナムに住んでいたアメリカ人の多くが、サイゴン市内の各所からアメリカ陸軍や海兵隊のヘリコプターで、海上に待機するアメリカ海軍の空母に向けて脱出した。撤退計画がサイゴン市内の混乱を受けて遅延したこともあり、北ベトナム軍はアメリカ政府の国際赤十字社の要請を受け、サイゴンに在留するアメリカ軍人および民間人が完全に撤退するまで、サイゴン市内に突入しなかった。なおアメリカ軍およびアメリカ大使館は、撤退後に北ベトナム政府に渡らぬよう計360万アメリカドルを撤退前に焼却処分した。
同日午前には、前日に就任したばかりのズオン・バン・ミン大統領が、大統領官邸から南ベトナム国営テレビとラジオで戦闘の終結と無条件降伏を宣言した。その後残留南ベトナム軍と北ベトナム軍の間に小規模な衝突があったものの、午前11時30分に北ベトナム軍の戦車が大統領官邸に突入し、ミン大統領らサイゴンに残った南ベトナム政府の閣僚は北ベトナム軍に拘束され(サイゴン陥落)、南ベトナムは崩壊した。少数の南ベトナム軍の将校はサイゴン陥落後に自決した[146]。


1975年4月30日、サイゴン陥落。
ベトナム戦争の幕引き。アメリカの敗北。
花嫁の慟哭。夫の行方。監視の目。思想改造の日々。
そして別れの朝。さらばサイゴン。
太平洋を漂流する、ボートピープルの魂。
「愛する祖国ベトナムは、アメリカに手痛い仕打ちを受けた」
「わたしは、ベトナムを捨て、アメリカは、わたしを受け入れた」

ホアンは、闇の舟底に身を隠した。
舟はベトナムを脱け出たらしいが、行き先は誰も知らない。
夢と未来の欠片が、波間に浮かんでは消えた。
光を探して漂流するボートピープルの素顔と真実。
38年の沈黙を破り、今、語られる、出ベトナム記。
完全実録。下巻同時発売。

【目 次】

上巻
第1章 陥落
第2章 脱出
第3章 上陸

【データ】
書籍:ホワン-雨のサイゴン 下巻(日本語版)
著者:Yutaka Unno(海野優)
頁数:237頁(本体のみ)
文字:75,340(日本語)
発行:WASEDABOOK

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